シュガー&スパイス
あきらかに寝起きって感じの掠れた声。
猫みたいなふわふわした真っ黒な髪が、段ボールの中を覗き込んでいた。
しかも、上半身裸……。
ず、ずいぶんイイ体付きで……。
細いのに、適度に筋肉質。
あの腕で、あの子を抱いたのか……。
「……」
……はっ!
バカバカ。あたし何考えて……。
お隣さんなんてどうでもいいのに。
どうも、その彼はあたしに気付いてないご様子。
挨拶は……また日を改めよう。
そう思って、そーっと向きを変えようとした時、長い前髪の隙間から、彼の瞳があたしを捕えた。
ぎゃ!こっち見た!
「あ……おはようございます。 新しく引っ越されてきたんですか?」
目が合ったからには無視できないじゃーん。
引きつった笑みがバレてしまわないように、コトリと首を傾げて見せた。
「……」
「……」
彼は、なぜかあたしをジッと見つめている。
……ええッ?
昨日の声、聞いちゃったのはあたしのせいしゃないでしょ!
緩くウェーブかかった黒髪。
意志の強そうな切れ長の瞳に。
スッと通った綺麗な鼻。
薄い唇は、ほんの少しだけ開かれていて
その奥に真っ白な歯が見え隠れしてる。
なんか……すっごく色気のある人……。