シュガー&スパイス
「あ……あたし、隣の202の仲岡といいます」
「…………」
う……。
なんで黙ってるの?
大きな瞳が、何かを探るように、その視線を落とした。
“なんだアンタ”とでも言われそうだ……。
て、てゆか、そもそもあなたがそんな恰好でいるのがおかしいんでしょ?
あたし、別に見たくて見てた訳じゃないんだからね!
さっき、マジマジと彼の体を観察してしまった事を後悔した。
威圧されそうな雰囲気に怖気づいていると、突然彼の雰囲気が変わった。
「ああ、俺、昨日ここに越してきた、篠宮って言います。すんません、コレ邪魔だったでしょ」
「へ?」
段ボールの中から淡いブルーのTシャツを取り出して、乱暴にそれを着ると、彼はぺこりと頭を下げた。
さっきの挑戦的な瞳なんて、まったく連想もさせないくらい、爽やかな笑み。
なんなの、この人……。