シュガー&スパイス




「すぐに片づけますんで。えー……と、仲岡さん?」

「え? ああ、いえ、いいんです。 ゆっくり片づけて下さいね。それじゃ」




別人かと思った……。
そのくらい、彼は人懐っこそうな笑顔を見せたんだ。




“ゆっくり片づけて”なんて思ってもない事を……。
ああ、あたしってほんとバカ!





「はああ」




彼に背を向けて、アパートの階段を下りながら、大きくため息をつた。







「あら、菜帆ちゃん。おはよー……ってどうしたの?寝不足?」




今日の青空みたいに清潔感溢れてる管理人さんに、目が眩みそうだ。





……恭子さん、助けて下さい。

隣に越してきた、ただならぬ男になんだか先行きが不安になった。










「菜帆」


駅の改札を出たところで誰かに呼び止められた。



この声は……。


振り返ると、ロータリーで手を上げたあたしの愛おしい人の姿。






「……英司!」



< 39 / 354 >

この作品をシェア

pagetop