シュガー&スパイス
街頭に照らされたふたつの影を、なんだかジッと見つめてしまう。
「……」
「……」
な、なんでこんな沈黙なんでしょーか!
黙ってあたしの少し前を歩く彼を、チラリと盗み見る。
わ……まつ毛長いんだぁ……。
ズボンのポケットに両手を入れて、ただ前を見つめてる篠宮さん。
その柔らかそうな髪が、歩くリズムに合わせて揺れている。
年下……だよね。
そう言えば……。
「千秋……」
「え?」
ぼんやりしていたら、いきなり彼が振り返った。
しかも目を見開いて……。
「……今、なんて……」
はっ!
や、やだ、あたしってば、口に出してたんだ。
「ご、ごめんなさい……、昨日段ボールに書いてある名前を見ちゃって……。彼女の名前?」
得体の知れないものでも見たかのように、篠宮さんは目を見開いたまま固まってる。
それから何度か瞬きをした彼は、やっと息が出来たみたいに「っはは」って笑った。
「あれね。 あれは、俺の名前」
「ああ、そうなんだ…………って、え、名前!?」