シュガー&スパイス
何よ、自分だってデートなんじゃない。
しかも、なんでコウなんて……。
それとも『千秋』って方がニセモノなの?
ほんと、何者?
◇
「はあ……」
何度目かの溜息をついて、窓から景色をそっと眺めた。
英司のマンションは、会社を挟んであたしの家とは反対にあった。
大きな高層マンションの15階の一室。
ここからの夜景は格別だった。
エリート商社マンともなると、こんな部屋に住めるんだ。
会社から有望されてると、違うなっていつも感心してたんだ。
――ガチャ
あ!
ドアが開く音で、あたしは慌てて玄関に向かった。
「おかえり、英司」
「ただいま」
8時をまわって、ようやく帰ってきた英司。
玄関で出迎えたあたしを見て、英司は目じりを下げて笑った。
きゅーん……。
やっぱり英司だなぁ……。この笑顔はあたしの心のビタミンだよ。
「お疲れ様。 仕事大変だった?」
英司のスーツを受け取りながら、あたしはそう聞いてみる。
少しだけ疲れた様子の英司。
英司はネクタイを緩めながら「はは」って笑った。
そしてその手であたしの髪に触れて、そっと耳元に唇を寄せる。
わわっ
ピクッと体が小さく反応してしまう。
思わず固まったあたしに、英司は甘美な魔法をかける。