シュガー&スパイス
「菜帆の顔見たら、疲れなんてふっとんだよ」
「英司……」
真っ赤になったあたしを見て、口角を持ち上げた英司。
そしてゆっくりとその腕にあたしを押し込めた。
瞬間包まれる、煙草とコーヒーの匂い。
そして、甘い香水の香り……。
英司の熱い唇が、耳たぶに触れて、そのままカプリと甘噛みされた。
「……っ、あ、あの……あたし、ワイン買ってきたの……英司の好きな……」
視界を塞いでいる胸を両手で押しやりながら、あたしは英司を見上げた。
「ワインもいいけど、俺はこっちがいいな」
腰に腕を回されて、英司の大きな手が背中を這う。
「え……でも、お腹すいてるでしょ?疲れてるならあたしが作るけど……」
「菜帆」
「……」
唇に指が触れる。
あたしの言葉を遮ると、切なそうに目を細めた。
「英司……?」
唇をなぞっていた指が、そっと頬を包む。
あったかくて気持ちいい……。
英司はしばらく黙ったままあたしを見つめていた。
ドキン ドキン
そして英司の唇がもう一度あたしの耳に触れて、そのままギュッと抱きすくめられた。
……英司……。