シュガー&スパイス
「……はい」
『あ、菜帆(なほ)? おはよう。その声は寝てた?』
「……え、英司(えいじ)、おはよ……」
なんとも楽しそうな声で、まるでからかうように言う英司にあえて冷静さを装って答える。
『またあの夢見てたの?』
あは。おっしゃる通り。
愛おしそうな受話器越しの声に思わず赤面してしまう。
携帯を片手に英司が目を細めたのがわかった。
23にもなって恥ずかしいな……。
まだ王子様を夢見てるなんて。
「……どしたの?」
ベッドから起き上がったあたしは、ちょうど鏡に映る自分の姿が見え慌てて髪をとく。
あ……別に、ここに英司がいるわけじゃないのに。
そう思いながら、なんだか慌ててる自分がおかしくて恥ずかしくて一人含み笑いをしてしまった。