シュガー&スパイス
なんとか仕事をこなしたあたしは、ようやくアパートにたどり着いた。
熱があるってわかったら、なんか余計に体が重たく感じるから不思議だ。
「頭いたー……」
目じりをキュッと抑えて、肩にかけていた鞄をかけ直した。
今日は早く寝よう。
きっと疲れがたまってるんだ。
階段を上がったところで話し声が聞こえてきた。
しかも、なんだかもめてるような?
そーっと覗き込んでみる。
「なんで? 約束したのに!」
今にも泣き出しそうな声。
髪の長い女の子と向き合ってるのは……、千秋。
なにしてんの?
あの人……。
「……そうだっけ?」
ドアに寄りかかったままの千秋は、なんとも面倒くさそうにそう言った。
「言ったよ、日曜はあたしと遊んでくれるって」
「……あのね、そんな事言ってると彼氏に怒られるよ?」
うんと優しい声色。
駄々をこねる彼女をなだめるような感じだ。
だけどその彼女はさらに大声で千秋に詰め寄った。
「あんなのどーだっていいよ! コウ君が本命なのに」
えええ。
なんなのこの会話……。
部屋に入りたいのに、なんだか出ていけないじゃん。