シュガー&スパイス
「ねえ、どこ行くの?」
結局、あたしは強引な千秋の口車に乗せられてしまった。
「んー?」と曖昧に言ったまま、あたしの手を引いて歩く千秋。
質問に答える気はないらしい。
……む。
「あのね! あたしだって忙しいんだよ?ちゃんと説明してくれるって言ったじゃない」
「忙しいって、約束してたの?」
「え?」
「例のイケメン彼氏と」
「……」
約束してるって言いたいとこだけど。
なんかそれで嘘をつくのは、虚しい気がした。
押し黙ったあたしにチラリと視線を落とすと、千秋は何かを目の前に差し出した。
「……なに、これ?」
「遊園地、行こ」
「はい?」
「余ったワンデーパスが2枚。 そして、せっかくの休日を持て余してる暇人がふたり」
確かに、今日の日付が記載されたチケット。
千秋はそれを顔の高さまで上げて、ヒラヒラと揺らして見せた。
「な? 行くっきゃねーっしょ」
「……」
それが理由?
楽しそうに、悪戯な笑みを向ける千秋。
うーん……。
なんだか納得してしまうのは、しゃくな気がした。