シュガー&スパイス
「……あ……」
「菜帆」
ガバッと顔を上げると、足元を見つめたままの千秋があたしを呼んだ。
「な、なに?」
「……」
ジッと何かを考えるように、ただ黙っている千秋。
ポケットに突っこんでいた手が、首元をさする。
「さっきは……いきなりあんな、怖がらせるような事してごめん」
そう言って、チラッと視線を上げる。
あたしが目をパチクリさせているのを見て、クシャリと笑うと千秋はドアをグッと開けた。
「ま、でも……
菜帆の気持ちに割り込めたんなら、それでいいや。
じゃ、おやすみ」
そう言って千秋は、さっさと部屋に引っ込んでしまった。
シンと静まり返る。
それは耳鳴りがしそうなほどで
やけに心臓の音をクリアにした……気がした。
…………は?