シュガー&スパイス
見えてしまった赤い月
頭、痛い……。
昨日、久しぶりに倫子と居酒屋に行った。
お酒は好きだけど、実はそこまで飲めるってほどじゃない。
けど、飲んだ。
……飲まずにいられなかった。
「うー……ん……」
重たい頭を抱えて、思い出すのはあの日の夜の事。
だって、アイツ去り際になんて言った?
“菜帆の気持ちに割り込めたなら、それでいいや”
って?
なにそれ!
「意味わかんないんだけど!」
ダン!
と、箸を掴んでいた手で、テーブルを叩く。
「ちょっと菜帆ー……もしかしてまだあの事言ってるの?」
「だって、だってどう考えても理解できないんだもん!冗談なの?冗談なら早くそう言って欲しい!」
「うーん」
ここは社食。
いつもはお弁当なんだけど、昨日結構飲んだせいで、寝坊しちゃって。
だから、久しぶりに会社の食堂で倫子とランチをしていた。
「もう、アイツあれからあたしに姿見せないんだよ?言い逃げじゃん!」
「アイツって誰?」
「アイツって、アイツよ!千秋よッ!」
って、あれ?
今の声……。