シュガー&スパイス



「仲岡! ちゃんと確認しろってあれほど言ったろ!」

「は、はい!」




――ダンッ!

目の前の上司が机をたたいた衝撃で、数枚の書類がパラパラと床に散らばった。



「本当にすみませんでした」



ガバッと頭を下げて、あたしは慌ててそれを拾う。


やってしまった……。

発注ミスをしてしまったんだ。


英司の事で頭がいっぱいで、あたし……ボーっとしてた。


ほんと何してんだ。



上司の呆れたようなため息が、あたしの降りかかる。




彼に迷惑をかけたくなくて、連絡を取らなかった。
でも、そのせいで気が散って、仕事に支障をきたすようじゃ、ダメなのに。

自分の不甲斐なさで、目の前がジワリとにじむ。

この期に及んで、涙を見せるなんてもってのほか。


『これだから女は』って、思われてしまう。

それだけは、嫌だ。




「これじゃ間に合わん、お前どうするつもりだ」

「……あの……」



そうだ。


発注したものが間に合わなければ、元も子もない。



唇を噛みしめて、顔を上げた瞬間、ふと煙草の香りが鼻をかすめた。





「……」



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