シュガー&スパイス
ようやく仕事を終えた頃には、すっかりオフィスは人がまばらになっていた。
パソコンの電源を落として、カバンを掴む。
大きなガラス窓からは、ビルの合間から大きな満月が顔を覗かせていた。
あれ? なんか……。
なんだかその満月に違和感を覚えて、首を捻ったその時。
鞄の中で携帯が震えた。
ゴソゴソとそれを取り出すと、一件の新着メールが。
「……」
コツコツとやたらヒールの音が耳に響く。
それは、節電の為にすっかり暗くなったこの廊下のせいかもしれない。
薄暗い中、顔を上げる。
「会議室……、ここだ」
開発部とかが、ここを使うみたいだけど、営業の事務のあたしにはまったく関係ない場所だった。
やたら冷たいドアノブを掴んで、そっと開けて中の様子をうかがった。
「……」
えー……と。
あ、いた。