シュガー&スパイス


驚いた。

英司からそんなセリフを聞くなんて。




あたしのグロスが、英司の唇を濡らしている。




どうしよう……。

すごくドキドキする。



ここが会社だと忘れちゃいそうだよ……。








「うん……当たり前だよ……」





――――……好き。


この言葉って、短いのに、口にするのってすっごく難しい。




そう言えば、あたし達付き合ってからもこの言葉をお互い言っていない気がする。


昔は、簡単に口にしていた。

年を重ねるごとに、なんだか素直になるのが難しくなってる。


そう感じるのは、あたしだけだろうか。




あたしの答えを聞いた英司は、なぜだか少しだけ寂しそうに笑うとグッとあたしを抱いてテーブルに乗せた。




「……当たり前、か……」

「?」

「そうだよな、こうして菜帆を抱くのも、いつの間にか当たり前になってた」

「……」






―――――……当たり前……。



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