シュガー&スパイス
こんなの変だよ。
だって、あたし達結婚を前提に付き合ってたんだよ?
英司……。
英司、あたしにプロポーズしたじゃん。
あたしの事、嫌いになったの?
嘘なんだよね?
これは……あたしが見た、悪い夢。
幻なんでしょ?
「…………」
見慣れた景色。
いつも彼と待ち合わせていた、駅前のベンチ。
そこに、知らない人たちが楽しそうにして座っている。
いつの間にか止まってしまった足は
もう自分ではどうする事もできなくて……。
あたしは滲んでいく世界の中心でたったひとり。
もう5月も終わるっていうのに、体中がすごく冷たい。