愛しい人~歌姫の涙~
携帯電話を閉じ、寝返りを打ったとほぼ同時に、それまで静かだった携帯電話が鳴り響いた。

慌てて開くと、番号の上に名前が表示されていないのを確認し、もう一度溜め息が漏れる。

朝のあの気持ちはどこへ行ってしまったのだろうと思ってしまうくらい、今日の私は溜め息ばかりだ。


「まあ、あいつから掛かってくるには早いか」


もともと、あいつからのこの時間帯での着信は期待していなかったが、この誰だか分からない相手から電話というのはそれ以上に期待などしていなかった。

もっとも、これを期待と呼ぶにはおかしな話だが。

そんなことを考えている間も、携帯電話は知らない番号からの着信を私に知らせ続けていた。
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