ブラックコーヒー
ピンポーン。
彼のマンションの前でインターホンを鳴らし、出て来るのを待つ。
少しすると足音が近付いて来て、ドアが開く。
「また、来たんか。」
「駄目、だった?」
「ええけど。」
ほぼ毎日来てる。
そして、来る度に繰り返されるこの会話。
「由奈。
今日はご飯作らんでええで。」
西野由奈-ニシノ ユナ-。
私の名前。
「仁。
お腹空いてないの?」
新木仁-アラキ ジン-。
彼の名前。
「ちゃう、ちゃう。
今から出掛けるから、どっか店で食べよーや。」
「…どこ行くの?」
「大阪。
おかんがたまには帰って来いゆーてうるさいねん。」
大阪…。
帰っちゃうのか…。
「今日中に帰って来るから、また明日作ってや。」
「うん。」
大阪帰って欲しくないな…。
大阪には…、仁の彼女がいるから…。
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