歩み
そんな日は来ないってことくらい分かるよ。
親父のことを受け入れるでかい心などないに決まっているから。
中学生のときの俺は、まだ携帯という、おもちゃのような電話を持っていなかった。
周りの人は自慢気に携帯を買ってもらった、と騒いで見せびらかしていたが、俺はそんな仲間には入らなかった。
なぜかって?
そんなものを持ってどうなるの?って疑問に思っていたから。
もし、携帯電話を持ったら、毎日親父からの説教の電話がかかってくるのが目に見えている。
今でさえ、この子機の電話に、毎日親父から電話がかかってくるのだから。
俺は出てやらないんだ。
聞く内容は分かっている。
「髪の毛を直せ」
「成績で上位を取れ」
くだらない話を聞き続けたら、耳が可哀想だろ?
だからだよ、だから。
時が流れる。
俺は仕方なく、漆黒の闇を羽織った。
ちょうどその頃、部屋が誰かにノックをされる。