歩み
そんな表情を見せなくても…。
「キモッ。何?」
優、お前は素直なんだな。
はっきりそんなこと言うなよ。
傷つくだろ…。
「ひでーし!!つうか、優って彼女いんの?」
まずこの質問からしようとしよう。
そしたら話を持っていきやすい。
この答えを聞いたあとに「好きな人は?」と聞いてみよう。
けどもし、「いる」って言われたら?
まぁ、その時はその時だな。
「…いないよ」
その時、優がぼそりと呟いた。
沈んだ表情を見せて、俺にこう言った。
まるでその表情が「助けて」と訴えているように思えたんだ。
だから手を差しのべたんだよ。
「嘘やん!優、かっこいいのにー。俺の彼女も言ってたし!」
さりげなく『自分には彼女いますよ』アピールをしてみる。
優は気づいてくれたかな?
「歩の彼女って誰?」
よし、食いついてきた。これを機に沙紀を紹介しておくか。
俺は窓際で友達と仲良く会話をしている沙紀の後ろ姿を指差す。
「あれー」
その指先に、優は視線を向けた。
「あのめっちゃ美人じゃないほう」
沙紀の隣には小林百合がいる。
「あー、水島さん?」
その時、気付いたんだ。優が彼女を見つめる眼差しが、二年前の俺にそっくりだと。