歩み
俺もこんな眼差しで沙紀を見つめていたのだろう。
今なら分かるよ。
「いつから?」
優は沙紀の方を見ながら俺に質問をしてくる。
そんなに俺と沙紀のことを聞きたいのだろうか?
「中学同じだから、中2くらいから」
「長くね?」
…長くなんかないよ。
だって俺は沙紀を奪ったのだから。
いわゆる「略奪愛」
最低な行為だけど、優は軽蔑をするか?
俺から離れていくか?
だから俺はこんな言葉を言ってしまったのかもしれない。
「俺、一途だもん」
一途なんかじゃないよ。沙紀と出逢ってから一途になったんだよ。
最初からこんな人間ではなかった。
過去を話したら、優はなんと思うだろう?
俺の言葉に、優からの返事はなかった。
優は黙ったまま、窓際をずっと見ていた。
沙紀を見ているのではない。
優は小林百合を見ていた。
もしかして…優…。
何かに気づき、俺は優を凝視する。
優が見つめる横顔が、胸を打たれるくらい、綺麗だった。
太陽の日差しのせいかもしれないけど、綺麗だった…。