歩み
俺と沙紀はお前のためにしてやったんだよ。
だから受け取ってくれよな。
「百合ーこっちに来て」
沙紀の呼び出しに快く応じてくれた小林百合。
ここからが本番だ。
失敗は許されないよ。
「なぁにー?」
近くで見るとますます可愛く感じる。
もし俺に沙紀がいなかったら間違いなく惚れていたな。
「ごめんね、小林さん!実はこいつが…」
俺が言おうとしたとき、優が俺の言葉を遮った。優は自分の力で進み出したのだ。
「俺が言うから…」
こう言って俺を見た優の瞳が迷いがなく、真っ直ぐとしていた。
だから安心していたのかもしれない。
「あのさ、えっと…えっと…」
必死な優。
外見はクールな優が、こんな必死な顔を見せるなんて予想外だった。
だから自然に零れていたのだ。
「頑張れ」と。
この次の瞬間、優の恋が一歩進んだ。
俺は嬉しくてたまらなかったんだ。
人のために動くことは大切なこと。
そう優に教わった。
「歩!まじありがと!お前最高!」
こう言われたときは反応に困ったよ。
そんなこと言われたのは初めてで。
優、お前には頑張って欲しいよ。
幸せになれよ。
俺はお前の幸せを願っている。
だって、お前は俺にとって「第一号」なのだから。
進め、進むんだ。
俺は背中を押してやるから。