歩み



なんとなく噂される理由が分かる。
だって美人なのだから。
その噂はやはり『美人』だとか『可愛い』とかだったし。
納得出来る。



「相沢瞳って有名よね。可愛いって入学式くらいから騒がられていたから」



「そ、そうなんだー…」



未だに体に熱がある。
それだけ衝撃的だったのかな?



「なによ、その薄い反応!!」



俺の反応にイラッときたのか、沙紀が俺の顔を覗いてきた。
その瞬間、沙紀の顔がみるみるうちに怒りの表情へ変わっていく。



「その真っ赤な顔なに!?あたしがいるのにときめいてるんじゃないわよ!!」



こう言って、俺の頬をぎゅっと握ってきた。



「い…いてぇ…」



「罰よ、罰!!早く教室に行くわよ!!」



沙紀は更に力を強めて、俺の頬を握ったまま校舎へと向かっていく。



そして俺は心に誓うのだ。



『もう誰にもときめかない』と。



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