歩み
まぁ、『奢れ』と言われたら快く奢るけどね。
「なんか意味わかんねぇよな。ごちゃごちゃしてるよな…」
この言葉を言ったあと、我に返った。
小林がいたことを忘れていた。
焦りながら小林を見ると、下を向いて悲しそうな表情をしていた。
ちくりと胸が痛む。
「こ…小林?大丈夫かよ?」
笑って誤魔化すのだけど小林には通用しないようだ。
また泣きそうな表情を見せる。
沙紀は小林の頭を撫でて、一緒に辛さを耐えていた。
「ねぇ、百合?昨日、鈴木くんから連絡きた?」
そう、俺は昨日小林にある提案をしたのだった。木田に連絡先を聞き、優と仲直りしろ、と。
忘れていた。
そういえばどうなったのだろう?
優から返ってきたのだろうか。
小林はゆっくりと首を横に振り、小さく微笑んだ。
その微笑みには感情が込もっていない。
「返ってきてねぇの?」
まさか、そんな。
優が小林に返事を返さないなんておかしいよ。
だって、だって、優は…。