歩み


短い冬休みはあっという間だった。
また前と同じ生活に戻る。
優と久しぶりに会って思ったこと。
優から表情がなくなった。
笑顔、怒った顔、悲しそうな顔、嬉しそうな顔。

全てが無くなっていた。


優はこの冬休みの間に、表情を失っていた。


だから余計何て話を切り出せばいいのか分からない。


ただ、唯一変わらなかったこと。
それは優が小林を見つめる視線。

その横顔は、何も変わっていなかった。



優はきっとまだ小林を想っている。



我慢を出来なくなった俺は、放課後教室に優を残らせた。
目の前に座る優。
真正面から向き合ったのは随分昔のように思える。




「あのさ、優。話が…ある」




何かに怯えながら口を開いて優に言う俺。




「うん?なに?」



優は小さく微笑み、俺の顔を見つめてくる。



そんな目で見るなよ。



沙紀が俺の背中をぽんっと叩き、勇気を与えてくれた。



怖くない、怖くない。



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