歩み
まじかよ。
ありえねぇ。
楽しい一年にするつもりだったのに初日からその夢は崩された。
なんか崖から突き落とされた感じだ。
犯人は当然こいつだけど。
俺は沙紀の爪先から頭のてっぺんまで舐め回すように見ていく。
俺より少し低めの身長。スカートから見える細長い脚。
小さな顔に目立つ瞳。
不覚にも可愛いと思ってしまう。
黙っていれば好きになっていたかもしれない。
「お前、俺をあまり怒らせない方がいいぜ?」
沙紀を見つめて、にやりと怪しい笑みを浮かべる俺。
こう言って、俺は沙紀たちの間を通り、教室の中に入っていった。
黒板に張り出されている自分たちの席の場所。
そこから《さき》という名前を探していく。
「…あった…」
お前の名前は水島沙紀。
忘れることのない名前になる。
「歩、大丈夫かよ?」
自分の席は真ん中の列の一番後ろだった。
なかなかの場所だ。
席に座ると隼人が駆け寄ってきてこう言ってきた。
「余裕だって!
ちょっとムカついただけ」
「お前なんか企んでるだろ?」
やっぱり?分かる?
「なんで?」
「水島沙紀はやめといた方がいいぜ?」