歩み
俺は見てしまった。
二人の距離が遠くなる瞬間を…。
沙紀が無言のまま、ただ俺をじっと見つめる。
そんなに変?
似合ってないのならはっきり言ってよ。
すぐ脱ぎ捨てるからさ。
「さ…沙紀?」
沙紀の顔の前で手をひらひらとさせる。
沙紀はそれに反応をし真っ赤になった顔で俺を見上げた。
「…やめてよ、歩…」
苦笑いしてすぐに下を向く沙紀。
やはり似合っていなかったのかな?
ごめん…けど似合ってると思った自分もいたのだ。
自画自賛だけれど。
「やっぱ似合わなかった?着替えて来ようかな…」
富田の馬鹿野郎。
何度心の中で叫んだことか。
沙紀に背中を向けて、もう一度家の中に入ろうとする俺。
けれど突然沙紀に引っ張られ、歩むのをやめた。
「え?なに?」
「誰が似合わないって言ったのよ…。ちゃんと聞きなさいよ…」
ちゃんと言ってよ。
俺は沙紀にふさわしい男かな?
「ん?」
「すごいカッコいいよ、歩…」