歩み
~2.意地悪なキス~
春の季節はいろいろなことがスタートする。
恋は年中無休で、俺の恋がスタートしたのは春だった。
「歩!体育館行こうぜ!」
始業式が始まるようだ。めんどくささが倍増する。
無くてもいいのに。
どうせ誰も聞いてないだろ?
みんなが耳を傾けるときは生徒会長の挨拶のときしかない。
司はみんなが憧れる人物なのだから。
俺は違うけど。
「めんどくさいなぁ…
隼人だけ行ってこいよ」
めんどくさそうなオーラを漂わせて、隼人に手を振る俺。
教室には俺と隼人しかいない。
隼人はがっくりと肩を下ろして、寂しそうな瞳をこちらに向けてくる。
「行こうよ!なんでだよ!」
「気が向いたらあとで行くわ」
気は向かないと思うけどね。
隼人は諦めたのか俺に背中を向けて教室から出て行った。
静かすぎる教室。
教室には俺しかいない。
聞こえるのは秒針の音と、俺の呼吸の音だけ。
「水島沙紀…ね…」
なぜこんなにも気になっているのだろう。
あの怒った顔が、
あの笑顔が、
あのギャップが、
俺から離れてはくれない。