歩み
秋晴れの下で走る車は、数十分後に空港に着いた。
車から空港を見ると、そこには同じ制服を着た人たちが沢山いた。
みんな気が早いね。
俺もその人だけれど。
「トランク開けますね」
富田は車を入口付近に停めて、トランクを開けた。
「さんきゅ!」
そしてキャリーバックをトランクから取り出し、俺に渡す。
「無事に帰ってくるように願っています。行ってらっしゃいませ。また連絡くださいね」
どこか寂しそうな瞳をする富田。
俺と離れるのがそんなに嫌なの?
意外と可愛い部分があるようだね。
そう思うと富田を直視出来ない。
俺は下を向いて笑いを堪える。
「はいはい。じゃあまたな!」
笑顔を見せて、キャリーバックを引き、空港の中に入っていく。
その時、遠くから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「歩ー!こっちだよ!」
声が聞こえてくる方に顔を向けると、そこには満開の笑顔を向けて俺を見ている沙紀がいた。