歩み
「あ、優だ!」
入口あたりを見ると、そこには優の姿があった。キョロキョロと辺りを見渡している。
冬服になった優もかっこいいと改めて思ったときだった。
そういえば広瀬もまだ来ていないな。
「優~」
優の名前を読んだ瞬間、俺はある人の存在に気がついた。
それは、小林。
優との距離は数メートル。
優は気がつくだろうか?小林の存在に。
どくん…と心臓が高く鳴る。
周りの音すら耳の中に入ってこない。
聞きたくないと心の中の自分が訴えているのかな。
耳を塞いで怯えているのかもしれない。
「…優…」
…どくん。
汗が流れる。
これは冷や汗だ。
優がこちらに向かってくる。
小林が優の隣を歩いていく。
優は小林の存在に気がつくと思っていた。
でも彼は何事もないかのように、平然とこちらに歩いてきたのだ。
なぁ、優の中にはもう小林がいないのか?