歩み



優と朝方まで語ろうと約束していたから、まだまだ楽しみは残っている。


「じゃあ、沙紀、また後で行くから」



「うん、わかった」



ロビーで沙紀と広瀬と別れ、荷物を持ち、部屋へと向かう。
洋風の綺麗なホテル。
長い廊下を俺たちはうろうろする。



「優~何号室?」



「確か602」



優の言葉を聞いた俺は、この数字を探し出す。


…597、598、599。


目で数字を追っていく。



「OK!あっ、ここだ」



俺たちの部屋は廊下の一番端。
そしてエレベーターからすぐの場所だ。
なんて条件がいいのだろう。
抜け出すには最適の場所だ。


ふざけた考えをしたのは俺だけだと思うけど。



「着いたー!」




ドサッと荷物を置き、ベッドに座る。
けれど気になるのがあった。



それは、景色。
優も気になったのか、カーテンを開けて、景色を眺めていた。



そこに広がっていた景色。
それは月の下で揺れる海。
光の反射で、波打つ度きらりと光る海。



一瞬にして心が奪われた。



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