歩み



…正午が過ぎ、少し経ったころ、部屋のドアが数回ノックされた。



「歩?入っていいの?」


ドアの向こう側から安里の声が聞こえてくる。
俺は横になっていた体を起こし、ドアを開けた。



「よっ!」



笑顔で来客を迎える俺。その来客も俺の笑顔に応えてくれた。



「お邪魔します!なんかいきなりごめんな?」



「全然!俺も安里と話がしたかったし!ほら、クラス一緒でも話すタイミングがないっていうかさ?」



苦笑いを浮かべて、安里を部屋の中に誘導する。
安里は首に巻いていたマフラーを外し、ソファーに座った。
俺も安里と向き合うようにソファーに座る。



話って何だろう?
いきなり聞くのも嫌だしな…。




「優と広瀬、順調か?」



突然、安里はこんな質問をしてきた。
だから悟ってしまったのだ。



安里が話すことの内容を。



それは、優のことだろ?




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