歩み
「俺はこの優を見て思うんだよ。…心の底から笑ってないって」
何かが崩れていく音がした。
何かが割れる音がした。
自分の中が滅茶苦茶になっていく。
ちょっと待ってよ…。
この優が笑ってないって?
俺にはそう思わないけど。
笑ってるじゃないか。
広瀬の隣で…
…トントン。
部屋がノックされる。
部屋を開けたのは家政婦だった。
「お飲み物とお菓子をお持ちしました。」
こう言って、コーヒーの入ったカップを机の上に置いていく。
そして最後に置かれたクッキーたち。
チョコレートがふんだんに塗られている。
きっと甘党な富田が買ってきたのだろう。
広がるコーヒーの香り。家政婦が部屋から出ていくまで俺たちの間には静かな空気が流れていた。
家政婦が部屋から出て行ったのを確認した俺は慌てて立ち上がり、あるモノを探し出す。
クローゼットを開けて、必死になり探す。
「歩?」
背中に向かって投げ掛けられる安里の言葉にすら答えているヒマはなかった。
確かめたい…