歩み


部屋は暖房がかかっているのに、寒い気がした。


「…え?」



安里はもう一度ソファーに座り、コーヒーを一口飲んだ。
その姿が様になっている。



「今更優に言ってどうなるって聞かれたら答えが見つからないけど、黙ってはいられないんだよ。これ以上。歩はいつも一緒にいるから分からないと思うけど…」



「なんだよ…」



「優の笑顔が無くなってきてる」




また、崩れた。
また、割れた。



もう直らないよ。



咲いたはずの笑顔は、枯れていく一方だった。

俺はどうすることも出来ない。


優の近くにいたのに気づかなかったなんて俺はバカだよ。



「…言ったとしても優の笑顔が戻らなかったらどうするんだよ?俺たちに優の幸せを壊す権利はない…」



俺はふらつきながら、安里のところに向かう。
そして話し始めるときのように向かい合って座った。



「確かに壊す権利はねぇよ。でも、手を貸すことは出来る」



力強い安里の瞳。
親友を助けたいと伝わってくる。



俺は…優を…




助けてやりたい。



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