歩み
気付いたときにはもう遅かった。
俺の声に気付いた二人がこちらに視線を向けている。
視線が、痛い。
もうあとには引けない。俺の時代はもう終わりか。ってなに勝手に終了してるんだよ。
俺の時代はこれからだ。
「またあんたなの?」
不機嫌そうな表情を見せて発言するのは沙紀だ。あからさまな態度を見せられると、言わなければ良かったと思ってしまう。
俺の方に近づいてくる紗紀。
ここで逃げたら本当に終わりだと思い、足に力を入れる俺。
「あ?」
「邪魔するんじゃないわよ!」
やっぱりムカつく。
こいつを一度でも可愛いと思った俺がバカだった。
「なんだと?」
「まぁまぁ、いいじゃん。またいつでも出来るよ。俺そろそろ行くね」
司は沙紀の頭を触り、こう言って体育館の中へと入って行った。
残されたのは険悪モードの俺と沙紀だけ。
「…やっとできると思ったのに…」
「は?なにを?もしかしてキス?」
バカにするかのように笑う俺。
からかうのが好きなだけ。
次の瞬間、お前は突然泣き出すから、守ってあげたいって思ったんだ。
だからあんなことをしたんだよ。