歩み



苦しくない恋なんてないんだよ。
猫や犬や虫や花だって苦しい思いをしているんだ。
人間だけじゃない。

恋が簡単なモノだって誰が決めた?


恋は難しいんだよ。
小林はよく知ってるだろう?



「でも…優くんには広瀬さんが…」



小林の顔が涙でびしょ濡れになっていく。
そこだけ小雨が降っているかのよう。


涙は汚いものを洗い流してくれるんだ。
だから小林は生まれ変わったんだよ。
新しい自分に。



俺は頭を掻いて空を見上げた。



「優には広瀬がいる。広瀬は俺の友達だ。でも小林も俺の友達。どっちの肩も持てないけど、俺は二人の幸せを願ってる」



誰よりも。
だから優が小林を選ぼうが、広瀬を選ぼうが、俺は二人の友達だ。
縁を切るなんて出来るはずがない。




「あたし…伝えてもいいの?」




「ばーか。伝えなきゃ前に進めねぇって!答えを出すのは優だ。小林はその答えを受け入れろ」




俺も受け入れる。
優は今迷っているはずだから。




< 384 / 468 >

この作品をシェア

pagetop