歩み


安里はとても喜んでいた。
まるで自分のことのように。
元カノの幸せを願う元カレ。
安里も強い。

俺の周りには強い人ばかりだ。
だから俺も強くならなければいけない。



頑張ろう、強くなろう。
これが今の座右の銘。




この時期、俺たち三年生の頭の中にある言葉は、《受験》。
この二文字だ。
聞くだけで憂鬱になってしまうのは俺だけかな。


「優~お前、進路考えた?」



ある日の昼食。
学生ホールにて、俺はラーメンを食べながら前に座る優に話を持ち出した。
優は何を目指しているのだろう。
そういう話をしたことがない。


これが俺の中の些細な疑問だ。



「何にも…」



だけど優から返ってきた返事はあまりにも気の抜けた返事だった。
でもほっとしている俺がいる。


「だよなぁ~…沙紀は決まってるし」




俺がほっとした理由。
それは自分も進路が決まってないからだ。
そろそろ焦った方がいいのかな?
でもなりたいものなんて…無い。



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