歩み
これだけの言葉じゃ物足りなかったかな。
優は眉間に皺を寄せて、俺の顔をじっと見つめ理解をしようとする。
「親父の一歩手前って?」
「歩、弁護士になるんだって!」
満面の笑みを浮かべてこう言った沙紀。
まさか俺より先に言うなんて想像もできなかった。
「ばか!沙紀言うな!」
慌てて沙紀の口を塞いでももう遅い。
優は目を丸くさせて、何も言わない。
やはり驚いたのかな?
「優…?」
「…えぇ~!?弁護士!?」
待ってたよ、その反応。その反応があるから頑張ろうと思えるのだ。
「そんな驚くな!」
「は?待って!お前、弁護士なんかになれるの?」
ちょっと、優さん。
俺をバカにしすぎではありませんか?
「鈴木くん知らないの~?歩はこう見えて意外と頭良いんだよ~?」
口から俺の手を離して、こう優に言った沙紀。
ちょっと、沙紀さん。
意外って何ですか。
余分ではありませんか?