歩み
「優!!」
俺は優に近づき、そっと触れた。
強く触れたら壊れてしまいそうで怖かった。
あの、星の砂のように。
「…あ…ゆむ…」
弱々しい優の声。
俺は更に苦しくなった。さらに涙の速度が速くなった。
空港の床には小さな水溜まりができている。
これは優から流れた涙だ。
「百合が…いないのかな…俺…百合を抱き締めることはできないのかな…」
「優…」
言葉が見つからない。
ただ名前を呼ぶことしかできない。
俺はゆっくりと優を包み込んだ。
少しでも安心して欲しかったから…。
「歩…俺わかんねぇ…世界が…世界が暗くて…意味わかんねぇだ…どこに道があるのかとか…わかんねぇんだ…」
優の言葉が俺の心に染み渡っていく。
現実なんだと…言われているようだった…。
小林…、
俺は約束を守れているだろうか…。
「百合…に会いたい…」
ほら、優がお前に会いたいって言ってるよ。
だから、おいで?
今日は小林の生まれた日だろう?