歩み



一緒に笑おうよ。
プレゼントもあるよ。
沙紀がケーキ焼いてくれたって。


歌も唄ってあげるから…


一緒に祝おうよ…。




「優!落ち着け!まだわかんねぇだろ…」




生存者は不明。
けれどいるかもしれない。
まだ希望が残っている。でもこの希望もすぐに消えてしまった…。




「…やめろ!!やめてくれ…きっと百合は…」




優は俺の腕を振り払い、出口の方へと走って行った。
小さな紙袋を置いて。



「優…」



騒然していた空港が、だんだん静かになっていく。
これは現実をみんなが受け入れたという証拠だろうか。



俺は受け入れたくない。

だって…、小林は…。




ふと横を見ると、そこには小さな紙袋が置いてあった。
誰かの忘れ物だろうか?不思議に思った俺は、それを取り、中を見る。



中には、小さな箱と、カードが一枚。
俺はカードを取り出して、中身を見てみる。




それを読んだ俺は、世界を恨んだ。
運命を憎んだ。


神様を嫌いになった…。





『百合へ
誕生日おめでとう。
これからはずっと一緒だよ。愛してる。 優』







お願いだよ、小林。
戻ってきてくれ。
優からまた笑顔が無くなってしまう…。




お前がいないと優は…。




だから、戻ってきて…



四人であの海へ行こうよ…

夜空を眺めようよ…。




夢を叶えようよ…。




小林…、
お前は優に逢えて幸せだったか?






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