歩み



優は今どこに?
俺は空港を出て、様々な場所に行った。
駅、公園、ゲームセンター、学校。
小林との思い出があるだろうと思った場所は全て行った。
けれど優の姿はなかった。


優が行く場所はあとどこがある?
…分からない。



そしてさっきから携帯が何回も鳴っている。
俺は出ることができなかった。
着信の相手は全て沙紀。電話に出てしまったら、現実を見せられそうで怖かったんだ。


…ごめんな、沙紀。
一人にして…。



俺は道路の端に車を停め、はぁ…とため息を漏らす。


進む世界。
走る車。
手を繋ぐ恋人。


笑い合う人間。



夢かな、これは。


俺は先ほどから現実から逃げている気がする。
こうやって、夢だと自分に思わせている。


でも無意味な行動。


無力な自分がまた涙を流した。




けれどこのままじゃダメだ。
俺は助手席に置いてあった携帯を手にとり、ある人に電話をかけた。




お前が心配だよ。
きっとお前は世界を、運命を、恨んでいるに違いない。



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