歩み


だから早く見つけ出して、抱きしめてあげてよ。

優は温かさを求めているはずだから。



「優、戻ってこいよ…お前が心配だ…」




心配だ、お前が。
右手でハンドルを強く握る。
やりきれぬ思い。
俺は必死に無力な自分と戦っていた…。




『いつか…百合を忘れられる日は来るのかな…』




優は最後にこう言って、携帯を切った。
優の声に変わり、次に聞こえてきた音は、ツーツーという音だった。
切なさが襲ってくる。




「優…」



頼むから、未来へ進んでくれ。
過去を振り返るな。



優は進まなくてはいけないんだ。



俺は車を発進させた。
今は優を一人にさせよう。
きっと優は一人になりたいはずだ。



そして俺は自宅へと向かった。




自宅に到着をすると、玄関にある人の姿を見た。

その人はしゃがみこみ、地面のアスファルトに視線を向けている…沙紀だった。



俺は慌てて車から飛び降りる。



一人にしてごめんね。



< 447 / 468 >

この作品をシェア

pagetop