歩み
だから早く見つけ出して、抱きしめてあげてよ。
優は温かさを求めているはずだから。
「優、戻ってこいよ…お前が心配だ…」
心配だ、お前が。
右手でハンドルを強く握る。
やりきれぬ思い。
俺は必死に無力な自分と戦っていた…。
『いつか…百合を忘れられる日は来るのかな…』
優は最後にこう言って、携帯を切った。
優の声に変わり、次に聞こえてきた音は、ツーツーという音だった。
切なさが襲ってくる。
「優…」
頼むから、未来へ進んでくれ。
過去を振り返るな。
優は進まなくてはいけないんだ。
俺は車を発進させた。
今は優を一人にさせよう。
きっと優は一人になりたいはずだ。
そして俺は自宅へと向かった。
自宅に到着をすると、玄関にある人の姿を見た。
その人はしゃがみこみ、地面のアスファルトに視線を向けている…沙紀だった。
俺は慌てて車から飛び降りる。
一人にしてごめんね。