歩み
「じゃあ聞くなよな!
教室戻ろうぜ!あ、俺らの担任、林田だってさ」
林田か。
去年と変わらねぇじゃん。
別にいいけど。
誰だって同じだよ。
俺には関係ない。
俺と隼人は教室のある二階へと向かう。
頭の中で沙紀とのキスのことばかり考えている。
いやらしいのかな?俺。もしかして変態だったりして。
そんなの願い下げだ。
変態でたまるか。
「…なんでキスしたくらいで怒るんだよ…」
「は?なんか言ったか?」
気づかないうちに俺は独り言を言っていたようだ。
それすら分からない俺って相当ヤバい?
聞こえていたかな?隼人に。
「別になんにも。
教室急ごうぜ」
沙紀にキスしたなんて言えるかよ。
今朝隼人に沙紀はやめとけって言われたばかりだし。
もし言ったら壊れる気がする。
俺たちは教室に向かって歩いていく。
「歩!今日遊ぼうよ!」
途中違うクラスの女子にこう言われたが、俺は「今日は無理」と言って断る。
今日は特別な日だしさ。
この光景をお前は遠くから見ていたね。
信用してくれなくていいから…、俺を好きにならなくていいから…、
司に見せていた笑顔を俺に見せてよ…。