歩み


制服をこんな形で着たくはなかった。
誰かの結婚式などなら快く着る。
けれど今日の目的は葬儀。
それも、小林の。


着た瞬間、気持ちが悪くなった。
脱ぎ捨てたいと心の中の俺が叫んでいた。
でもできない俺は、ぐっと堪えるしかないのだ。


今日はきちんと制服を着よう。
そう心の中で誓い、ネクタイをぎゅっと締めた。


そして富田の運転で、葬儀場に向かった。


その間、俺たちには会話という会話はない。
まるで昔に戻ったかのようだった。

富田も俺に気を使っているのだろう。
顔色からそう分かる。


俺はずっと携帯を眺めていた。
携帯に映るもの。
それは、優と小林の写真。



小林が帰ってきたときにあげたかった写真だ。
二人の愛の写真。


これはもうあげることはない。
もし今優にこの写真をあげても、悲しさが増えるだけだ。
喜んでくれるはずはない。


だから俺だけの秘密にしよう…


いつか、いつか、優が前に進むことができたとき…あげることにしよう。




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