歩み



幸せにしてないなんて言うなよな?
小林は幸せだったから、こんなにも眩しい笑顔を見せていたんだよ。


小林は優を愛していたんだな。
この写真からすぐに伝わってくるよ…。




ゆっくりと葬儀が始まる時刻へと近づいていく。優の姿は会場にはない。まだ来ていないようだ。

来ないつもりだろうか?
俺は指定された席に座り、優が来るのを待つ。
けれど優の姿は見られないまま、葬儀は始まってしまった。



遺影の周りには沢山の白い百合の花が飾られている。

小林は花にたとえると百合だろうか。
名前と同じ百合の花。
気品に溢れていて…誰もが羨むほどの女性で。


俺はそう思っていた。
でも優は違った。
優は小林を花にたとえると『桜』だと思っていたんだ。




…時間が過ぎていく。
会場に溢れていく、泣き声。
何人かの人が『百合』と小林の名前を呼んだだろう。



俺はそれを黙って聞いていた。
そんな時、俺の隣にある人が座ったのだ。




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