歩み
「今すぐ百合を忘れろって言われても無理なんだ…百合を忘れられない…」
小林を忘れろなんてそんな酷いこと誰も言わないよ。
俺だって小林をすぐに忘れろなんて言われたら『無理だ』と言って否定をする。
だから焦らなくていいんだ。
「そりゃそうだろうな…」
俺は足元に視線をずらし、汚れた靴で石を蹴った。
ころころと転がる石は何の目的もなしに、ただ、ただ転がり続けた。
この時に言った優の言葉がずっと離れなかった。
あなたはどうしますか?
「歩には分かるか?」
「え?」
「愛する人を亡くしたつらさ」
突然のことで頭が回らない。
考えてもいなかったことだ。
俺は周りの人を今までに亡くした経験はない。
だから悲しさとか、辛さなど分かったフリだけをしていたのかもしれない。
小林という親友を亡くして初めて気付いた。
人を亡くすことは、こんなにも辛く、悲しく、そして重いものだと…。