歩み
そして今年の冬は一度も雪が降らずに、幕を閉じた。
迎えるのは春。
俺たちは卒業の季節を迎える。
桜の花びらが膨らみ始めたころ、俺たちの卒業式は行われた。
「俺、離れたくないよー!」
今日で制服を着るのが最後だと思うと切なくなる。
もっと沢山着とけばよかった。
そして優たちと離れたくない。
春からはそれぞれの道に進み、きっと会える時間が少なくなるからだ。
そう考えるとまだ高校生でいたい。
「また会えるって!」
優は笑いながら俺を見下ろす。
優の笑顔は無くならなかった。
無くなってしまうと不安になっていたのだが、無くなりはしなかった。
優はいつもと変わらない笑顔を俺に見せてくれる。
それを見る度、俺は嬉しくなるんだ。
「俺のこと忘れるなよ!」
「忘れるかよ、歩には感謝してるからな。お前がいなかったら俺、ここにいなかったな、絶対!」
「優…お前…」
どうしてそんなこと言うんだよ。
俺の涙腺が弱いことを知ってて言うのか?
俺は約束を守っているだけだ。