歩み
ただ、それだけ。
「歩…今までありがとな」
優が俺の目を真っ直ぐ見つめて言うものだから、俺は反らすことなど出来なかった。
優に応えなくちゃ…。
でも、悪い。
涙が出てきたようだ。
「泣かせるな~!」
俺は慌てて優に背中を向けて溢れる涙を拭った。
小林、今日も快晴だからよくこっちの世界が見えると思うんだ。
だから、気が向いたら、卒業式を見に来てよ。
優が答辞を読むからさ。
卒業式が始まっていく。校長式辞、卒業証書授与、校歌斉唱、そして生徒代表の答辞。
「答辞…
桜が咲き始め春も盛りになる頃、僕たちはこの学校に入学をしました。
右も左もわからない幼い気持ちで…」
優の答辞が始まる。
それと同時に、入学したての頃を思い出す俺。
俺は優と入学式のときに出逢った。
クラス発表の場所で。
優を見たときは本当に驚いたよ。
王子様のようで見とれてしまった。