歩み
不器用でごめんな。
けど俺はあいつよりお前を想っているよ。
本当だから。
教室まであと少しのところで、俺の足は歩くのをやめた。
なぜならば、少し離れたところに沙紀がいたからだ。
今朝一緒にいたショートカットの女と隣同士で歩いている。
沙紀を見ただけなのに、心臓が嬉しそうに勢いよく弾んだ。
それと同時に体が熱くなっていく。
熱なんかないし、どうして?
沙紀との距離が近いだけなのに…。
目が離せない俺がいた。
体は硬直したまま。
動こうとしない。
いや、動きたくないのかも。
近づく沙紀。
なにか言われるだろうか?
キスしたときの光景が、頭の中から離れない。
驚いた顔で俺を見つめる沙紀の姿が、「意地悪」と言って泣いた沙紀の顔が、俺を熱くしていく。
気づいていますか?
俺の熱い視線に。
好きなのかな?
そんなはずない。
俺は沙紀を遊び相手だとしか思っていなかった。
沙紀に突き放されるともっといじめたくなるんだ。