歩み
あのカップケーキは俺にとって特別なものだから。
やっぱり甘い香りはダメみたいだ。
しばらくその香りの中にいると、気持ち悪くなってしまう。
俺はため息を溢して、下駄箱へと急ぐ。
下を向いて歩いていくと、誰かの声が聞こえてきた。
まだ遠い声。
この声は、お前の声だ。
間違えるわけない。
お前とは今日初めて知り合ったけど、間違いないという自信はあった。
また、熱が帯びていく。
慌てて顔を上げると、そこには俺の知らない女の子と、沙紀の姿があった。
「…やっぱりね」
やっぱりお前だった。
笑顔でこちらに向かってくる沙紀たち。
俺の存在に気づいて…。
歩くのをやめて、沙紀が近づくのを待った。
近づいてくる沙紀の姿に違和感を感じる。
その理由は、ピンク色のエプロンをしているから。
エプロン姿の沙紀が可愛くて…、思わず引き止めてまたキスしたくなる。
そんな自分勝手な行動をしたら嫌われるのが目に見えているけど。