歩み
~3.カップケーキ~
人間は自分で勝手に殻を作って、その中に閉じ籠り、外の景色を見ようとしない。
もしかしたらある人が自分を見ているかもしれないのに、現実から目を反らす。
俺は気付いたんだ。
そのままじゃダメだって。
この殻から出たいって強く思った。
俺はまだまだヒナのような人間だけど、いつか飛べるはず。
成長する、成長していく。
携帯なんて必要ないただのガラクタだと思っていたけど、大事なモノだと気づかされた。
こいつはきっと沙紀との距離を縮めてくれるだろう。
「携帯…ですか?」
富田は俺の言葉の意味が分からないのか、困った表情を見せてきた。
それもそのはずだ。
入学当時、富田は俺に携帯を持たせようとしたのだが俺が拒み、その話はなくなった。
けどその翌年、欲しいとねだる俺がいる。
だから富田は困った表情を見せているのだろう。
俺は富田のデスクに近づく。
富田は黒渕メガネを外して、溜め息を溢した。
この反応を見ていれば答えくらい分かる。
結果は「NO」